図書館員@UW研修者のブログ

2017年5月~11月にワシントン大学東アジア図書館で研修していた大学図書館員の期間限定更新ブログ。大学図書館での仕事やシアトルの生活をゆるゆるお送りします。

図書館紹介~メリーランド大学編~

 

東海岸図書館巡りはワシントンD.C.郊外に位置する、メリーランド大学から始まりました。

 

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なお今回の図書館巡りは、東海岸地域の東アジアコレクションの見学及びそこに勤務するJapanese Studies Librarianの方々に面会し、アメリカで日本研究を行う研究者への支援内容や、Subject Librarianとしての仕事の様子をお伺いすることを目的としました。

 

メリーランド大学では、プランゲ文庫室長兼East Asian Studies Librarianの巽由佳子様に、プランゲ文庫及び東アジアコレクションを所蔵するMcKeldin Libraryをご案内いただきました。

 

ゴードン W. プランゲ文庫はHornbake Library4階に位置しています。

 

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コレクションは終戦後の1945~1949年に、GHQ配下機関である民間検閲局(Civil Censorship Detachment)によって収集された日本で出版された印刷物。メリーランド大学の教授であり、当時GHQで歴史室長を務めていたプランゲ博士の手によって、検閲制度が終了した後木箱に詰められ海を渡り、メリーランド大学へと運ばれました。日本国内では所蔵のない資料を多く有しており、利用者はアメリカ国内のみならず、日本からの研究者も多く訪れます。

 

コレクションは保存のためマイクロ化、デジタル化が進められており、現在図書については児童書や教科書関係資料がアーカイブ化は完了、現在は社会科学系分野のデジタル化が進められています。

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コレクション内の図書は、児童書と教科書コレクションの他、文学、経済、政治など分野ごとに分類整理がされ、配架されています。検閲にあたり、出版社はCCDに2部資料を提出することを義務付けられていましが、検閲後は1部が出版社へ返却され、残る1部をCCDが保管していました。CCD保管用だった分がこのプランゲ文庫にあるのですが、中には同タイトルの資料が複数冊ある場合もあり、今となっては返却しなかったのか、もともと2冊以上提出されていたのかわからないものの、重複する本もすべて含め、1冊1冊をコレクションとして保存しています。

中には分類自体が終わっていない資料(和装本など)もありました。

 

また、デジタル化したくとも物理的に難しい資料の一例をご紹介いただきました。

点字の出版物です!

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私の性能の悪いカメラでは点字を全く映せていませんが…このように直接現物に触れてこそ意味がある資料は、保存のためにはデジタル化が必要であるものの、利用のためにはそれだけでは十分でない資料があることを教えていただきました。

また、検閲の対象にこのような資料も含まれていたのというのも興味深いです。実際には検閲できる人物がおらず、収集されただけに留まったものもあるようです。

 

こちらは壁新聞。学校の壁などに貼られていたとか。

同様のテーマで地域ごとに発行されていたため、地域の特色が見られる新聞です。

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壁新聞のコレクションは、2018年に完全オープンアクセスで公開予定となっています。

資料としては保存のためにデジタル化しても、著作権等の関係で完全にオープンにはできず、結局はキャンパスまで足を運んでもらいデジタル化された資料を閲覧してもらうという現状もあるため、今回オープンアクセスとなることはプランゲ文庫コレクションとしては画期的な取り組みになるそうです。公開をお楽しみに!

 

既にマイクロ化が終了している新聞&雑誌の箱々。写真だとこの箱数の多さに圧倒されることを伝えきれないのが残念なのですが、雑誌は約13,800タイトル、新聞は約18,000タイトルという点数が保管されています。

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プランゲ文庫を見学した後は、メリーランド大学のメインライブラリーMcKeldin Libraryに所蔵されるEast Asia collection見学へ。

1階にあるPeriodicalと、4階にある以下の集密書架に配架される資料が中国・韓国・日本語のコレクションとなります。

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メリーランド大学での日本語資料のコレクションポリシーとしては、Japanese Studiesで必要となる分野の他、特にプランゲ文庫でも扱っている占領期についての資料は積極的に収集するようにしているそうです。館内は資料再配置の真っ最中で、東アジアコレクションもまた違う書棚へ移動されるそうです。

 

McKeldin Libraryでは東アジアコレクション以外にも館内全体を一通り回ってみました。

メインライブラリーということもあり規模も大きく、2階には近々完成予定だというResearch Commonsがあります。この階は書架なしです。

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夏休み中ということで人はまばらでしたが、学期期間中は人が多いそうです。どこのコモンズスペースも、学生には人気なんですね。

色々な形の机やいすが好きなように動かせるように配置されています。

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↑組み合わせの難易度が高そう。

 

1階にはカフェが。図書館入り口の手前側にあります。

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今は人を配置しなくなったという受付の名残も。

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そしてこちらが外観です。

 

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メリーランド大学D.C.中心部から電車で30分、駅からも15分ほど歩いた閑静な場所に位置しています。

赤レンガの建築と白く舗装された歩道で統一されたキャンパスは、散策しても良し、ベンチに腰掛け時を過ごすだけでも心穏やかな気持ちになれる雰囲気の場所でした。

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今回面会した巽さんには、旅の初日で緊張も大きかったのですが、気さくなお人柄に旅の疲れも吹き飛び、楽しく見学とお話を伺わせていただくことができました。誠にありがとうございました!

 

~おまけ~

メリーランド大学の顔でもあるブロンズ像のTestudoとマスコットキャラクターの亀。

アメリカに来てから色々な大学を訪問しましたが、今のところメリーランド大学が一番マスコット(亀)をいたるところで目にした気がします。

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