図書館員@UW研修者のブログ

2017年5月~11月にワシントン大学東アジア図書館で研修していた大学図書館員の期間限定更新ブログ。大学図書館での仕事やシアトルの生活をゆるゆるお送りします。

図書館紹介~コロンビア大学編~

東海岸図書館紹介第2弾はニューヨーク市マンハッタンに位置するコロンビア大学、C.V. Starr East Asian Library。

アメリカでも最古最大規模の東アジア図書館の一つです。

 

こちらでは、Japanese Studies Librarianの野口幸生様にインタビューを行った後、館内をご案内いただきました。ちなみにiPod tours of Starr Libraryなるものも図書館のWebサイトにあります。日本語の案内ありです。

 

C.V. Starr East Asian Libraryのあるコロンビア大学モーニングサイドキャンパスは、最寄りの地下鉄の駅から地上に出ると、すぐ目の前に位置します。

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キャンパス中央のButler Library(メインライブラリー)前の広場は生憎整備中。

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現在キャンパスのメインストリートとなっているCollege Walkは昔公道だったそうで、北側はUpper Campus、南側はLower Campusと分断されていたそうです。

 

C.V. Starr East Asian Libraryはかつてコロンビア大学のメインライブラリーとして機能したLow Library(現在は大学本部として機能、Visitors Centerも入り口近くにある)に向かって右手の…

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Kent Hall3階から入館できます。

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↑この階が3階のため、入ると正面に図書館への入り口があります。

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かつてはLaw Schoolの校舎として使用されていたKent Hall。Law Schoolの移転に伴い、1962年にEast Asian Libraryも含む、East Asian Studies関係の学部などが場所を譲り受けました。

閲覧室奥に輝く正義の女神のステンドグラスからは、Law Schoolであった名残がみられます。

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館内は3階にReading Roomとレファレンス資料や新聞・雑誌、1~2階のStacksに一般図書が配架されています。

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木柱や木の書棚に囲まれた落ち着いた雰囲気で、中2階に設けられた閲覧席では勉強もよく捗りそうです。

 

壁にはコロンビア大学の日本文学・文化研究者といえばこの方、ドナルド・キーン名誉教授のプレートも。キーン名誉教授は現在でも図書館の強力なサポーターだそうです。

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同フロアには情報検索のためのPublic Work Station (PC)エリアもあります。

通常のPCの他、日中韓の言語ごとにわかれたCD/DVD専用のスタンドアローン端末が設置されています。

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利用者スペースと事務スペースの境には、1893年シカゴで開催された世界万博日本館に展示されていたという木製キャビネットが聳えています。

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1~2階のStacksは、建物の天井が高いため1階分を更に半分に区切りM階としており、4層の書庫フロアとなっています。M階部分の床はかつてガラスのままだったそうなのですが、コロンビア大学の共学化に伴いすべて塗装し直したという名残も残っていました。

 

日本語コレクションとしては人文科学と社会科学分野を中心に蔵書構築しており、特に文学、歴史、宗教、美術の分野が強みとなっています。近年は学際的な研究も盛んなため、自然科学系の資料も収集の機会が増しているそうです。

書庫を回ってみて、館内にある資料だけでも十分な点数だと感じましたが、全体(約100万冊!)の半分以上がプリンストン大学との共同外部書庫に送られているそうです。日本語コレクションは、内約30万冊強。書架の狭隘化もあり、過去10年で貸出がない資料は、機械的に外部書庫行としているとのことです。

 

日本語以外のコレクションでは、チベット言語の資料が所蔵されているのが特徴的でした。写真には収め損ねたのですが、細長い経典が1本1本収められるよう専門のキャビネットが設けられていました。Tibetan Studiesのライブラリアンはカナダのトロント大学と兼務しており、両大学共同での蔵書構築と研究支援が進められています。

 

図書館以外では、キャンパス内も少しご案内いただきました。

 

コロンビア大学は1754年にキングスカレッジの一つとして誕生し、1897年に現在の地、Morning Heightに移転しました。移転してからも120年という歴史があるキャンパスには、歴史的な建造物、趣ある様々な様式の建造物が数あります。大学のロゴは王冠。

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Kent Hallをでると目にとまる(隣のPhilosophy Hall正面にある)ロダンの「考える人」。

 

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中は撮影禁止のSt. Paul's Chapel。美しく荘厳な雰囲気に神聖な気持ちになります。

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挙式もできるようで、ワシントン大学での同僚がかつてこちらで結婚式を挙げたとのこと。

  

コロンビア大学訪問は2日にわたり行い、1日は野口様に面会、もう1日はJapanese Catalogerの森本英之様にお会いし、アメリカにおける日本語資料の目録作成に関連するお話を伺いました。こちらに来てから忘れそうになりますが、一応目録担当なので…!

野口様との面会では、Japanese Studiesの学生の中でも、日本語があまり得意でない学生に対する支援の難しさや、英語で書かれた日本研究資料を探すことの難しさを伺いました。日本語ではよく扱われそうなテーマであっても英語では扱いがなく、特に人文系領域の英語文献の少なさと、(日本語が十分に読めない学生は、場合により)それにより研究テーマを変更せざるを得ない状況があるというエピソードが印象的でした。

森本様には、私個人からの質問だけでなく本学の目録担当からの質問も併せて、目録に関する多岐にわたる内容にお答えいただきました。ワシントン大学でのカタログ作業では、「日本語のカタログはコロンビア(森本さん)のレコードを参考にする」と日々聞いていたので、直接質問のできる貴重な機会を得られて感激です。

 

お二人ともお忙しい中、インタビューに長くお時間を取っていただいた上に資料をくださったり3人でお昼をご一緒したりと、お二人のおかげでニューヨーク滞在の2日間、充実した訪問を行うことができました。

 

最後にもう一つコロンビア大学関係のエピソードを…

ワシントンD.C.からNYへの移動時に乗るはずの高速バスが全然来ず、D.C.の駅でだいぶ苦労したのですが、その時に助けてくれたトラベラーがコロンビア大の院生でした。その時はそうとは知らずにD.C.で別れたのですが、翌朝ばったりキャンパスの中で会って本当に驚きました。

大都会で人の縁とあたたかさを感じることのできたコロンビア大学訪問でした。

 

~おまけ~

コロンビア大学のBook Storeにて。

ライオンがマスコットキャラクター!かっこいい!

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