図書館紹介~イェール大学編~
東海岸図書館巡り第3弾はNew Havenにあるイェール大学。
アメリカ最古の計画都市のひとつである街とそして伝統ある大学。New Haven訪問日は天気にも恵まれ、図書館だけでなくキャンパス内もたくさん写真を撮って歩いてしまいました…。
イェール大学で面会したのはLibrarian for Japanese Studiesの中村治子様。大学のメインライブラリーであるSterling Memorial Library (スターリング記念図書館)内にあるEast Asian Reading Room及び日本語コレクションの一部をご案内いただきました。
こちらがSterling Memorial Library。
1階は誰でも入れますが、書庫のあるフロアはセキュリティがあり、学内者のみが利用可です。
エントランスホールは観光スポットの一つにもなっており、崇高な雰囲気に圧倒されます。首が痛くなるのにも気づかず天井を見上げ続けてしまうという…。
見た目も中身も年月を感じさせるゴシック様式の建造物ですが、実は1927年着工、1930年竣工と意外と新しく、あえて古く見せる建築方法をとっているそうです。
設計者は建築家James Gamble Rogers、イェール大学の他の校舎の建築も同時期に多く手掛けています。石造の彫刻家はRene P. Chambellanで、館内をよくよくみてみると、遊び心(と言っていいかわかりませんが)がたくさん!探すのが楽しいです。
1階にあるStarr Main Reference Room。アメリカに来てワシントン大学スザロ図書館に続いてこんな素敵なレファレンスルームを見れるとは…!
その横にはもともと清掃用具を収納していたと思われる保管庫が。
展示ケースの並ぶ廊下の柱には個性豊かな石造の数々。
こちらは館内にあるMusic Library。建築当時は中庭だったの場所を、屋根を設けて館内仕様としたそうです。つまり窓のある壁部分は外壁にあたる部分だったんですね。
さてここからが本題ですが…
East Asian Reading RoomはSterling Memorial Libraryの2階に位置します。
こちらには雑誌とレファレンスブックが配架され、更に閲覧席が設けられています。今は工事中のため窓がおおわれていますが、(他の図書館内も含め)ステンドグラスがはめ込まれています。
以前はこの部屋にレファレンスデスクも設けていたそうなのですが、今は人が常駐することはないそうです。
レファレンスブックのある書架では、East Asian Studies所属の利用者が、借りた本をまとめて置いておくことができるReserved Shelvesがあり、実際に何冊もの本が借りている利用者の名前ごとに管理されていました。
閲覧席には障子を利用したパーテーション。
他には展示ケースもあり、イェール大学卒業生である朝河貫一の著作などが展示されていました。
2階にはReading Roomの他、East Asian Studiesが優先して使用できるクラスルームとセミナールームもあり、授業で使用されています。
さて2階のReading Roomから離れて一般書架へ。
Sterling Memorial Libraryは見た目からはわかりませんが、7階建て16層で約400万冊が収蔵されています。写真にはありませんが、館内エレベーターはボタンがかつて見たことのない仕様(M階ボタンが多い!)でちょっと不思議な気分です。
(ほかの東アジア言語もそうですが)日本語の一般図書は、他の西洋言語の資料と同様LC分類に基づき、一般書架に組み込まれる形で配架されています。
今回見せていただいた書架はLC分類で東アジア、アフリカ、オセアニアの言語・文学に当たるPLの書架。2M階に日本語部分にあたるPL501-889がまとまって配架されています。
日本語コレクションとしては、文学(特に江戸期)、歴史、映画(チラシ、パンフレット、カタログなど)、そしてLGBTQ(同性愛)関係などを強みとしています。イェール大学ではかねてよりLGBT 研究が盛んで、日本語コレクションとしては、2006年より、日本のLGBTQコミュニティ資料の収集などを行っています。
また貴重書のコレクションでは、前近代日本の資料としては日本国外でも大きな規模を所有する大学の一つでもあり、目を見張るものが多々あります。例えば時は幕末、ペリー来航時に主席通訳として同行していたイェール大学教授サミュエル・ウェルス・ウィリアムズ教授がアメリカへ持ち帰った資料の一つに、吉田松陰が「世界見物」を嘆願する書状が含まれていたりします。
図書館見学後は、大学のキャンパスツアーにも参加してみました。このツアーでしか入れない場所や、Beinecke Rare Book & Manuscript Libraryにも訪問できます。
個人的にツアー前の待合室で流れる”That's Why I Chose Yale”が面白くて、高校生だったらきっと入学したいと思う大学だな、と感じました。見るだけで楽しい気分になれるのでよければどうぞ!
www.youtube.com 実際の生徒と教職員が参加し作成されていて、撮影場所の一つに図書館が使用されていたのも(そしてその使われ方も)面白かったです。この映像を見終わった後、ツアーガイドの学生たちが「なぜ自分がイェール大学を選んだか」という理由と共に自己紹介をして、キャンパスツアーが始まります。
見どころポイントの一つはイェール大学、そしてNew HavenのランドマークでもあるHarkness Tower(鐘楼)。約66メートルと、他に高い建物を目にしないこの近辺では遠目でも存在がわかります。ツアーでは一般では入れない施錠されている中庭に入り、鐘楼や校舎の説明を聞くことができます。
青い空に聳える塔。
キャンパスのどこにいてもそうですが、特にツアーで訪れたゴシック建築に囲まれた静かな中庭でこの塔を見上げると、古の都にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。
もう一つの見どころはスペシャルコレクションが収集されているBeinecke Rare Book & Manuscript Library。世界の美しい図書館としてもよく紹介されている特徴的な図書館。
外壁は大理石をはめ込んであり、光が当たると綺麗なそうな。収集されている資料はガラス壁で覆われた建物の中心部に柱のように配架されています。
入り口からぐるりと、この周りを囲むように展示ケースやソファーが配置されています。
ちなみに展示ケースにはグーテンベルグ聖書が展示されています。Library of Congressにあったグーテンベルグ聖書には、(ツアーで説明してくれるのもあって)人だかりもできていましたが、こちらではみな目もくれず、書架と壁ばかりに注目しているという…。
ツアー以外はSterling Memorial Libraryと地下で繋がっているAnne T. and Robert M. Bass Library(学部生用図書館)に行ったり、Book Storeに寄ったりしていたら1日があっという間でした。時間がもっとあれば大学の美術館にも行ってみたかったのですが、New Havenでは宿泊しない予定だったので泣く泣くその日の夕方にBostonまで移動しました。
今回面会した中村様には、滞在スケジュールが短く、また中村様ご自身もご多忙の中、館内の案内だけでなく移動中や昼食中でも終始こちらの質問に回答いただいたり、また大学内の見どころなどもご紹介いただきました。
最近の図書館トピックでは、スターリング記念図書館の中央に位置していたテクニカル部門が、2016年1月(←最近でもないですかね…)に図書館から15分ほど離れた場所へ移動し、その跡地にはCenter for Teaching and Learningが入った、という話を聞きました。また、9月にオスロで開催されるEARJS(日本資料専門家欧州協会)年次大会でご発表されるということで、そのことについても少しお話を伺ったりしました。とにかくここには挙げきれないくらい、短い時間で図書館のこと、大学のこと、New Havenのことと多岐にわたるお話に、またゆっくりと訪れる機会を持ちたいなと思う滞在となりました。ありがとうございました。
~おまけ~
イェール大学のマスコット犬、Handsome Danくん。バスにも乗ってます。
図書館紹介~コロンビア大学編~
東海岸図書館紹介第2弾はニューヨーク市マンハッタンに位置するコロンビア大学、C.V. Starr East Asian Library。
アメリカでも最古最大規模の東アジア図書館の一つです。
こちらでは、Japanese Studies Librarianの野口幸生様にインタビューを行った後、館内をご案内いただきました。ちなみにiPod tours of Starr Libraryなるものも図書館のWebサイトにあります。日本語の案内ありです。
C.V. Starr East Asian Libraryのあるコロンビア大学モーニングサイドキャンパスは、最寄りの地下鉄の駅から地上に出ると、すぐ目の前に位置します。
キャンパス中央のButler Library(メインライブラリー)前の広場は生憎整備中。
現在キャンパスのメインストリートとなっているCollege Walkは昔公道だったそうで、北側はUpper Campus、南側はLower Campusと分断されていたそうです。
C.V. Starr East Asian Libraryはかつてコロンビア大学のメインライブラリーとして機能したLow Library(現在は大学本部として機能、Visitors Centerも入り口近くにある)に向かって右手の…
Kent Hall3階から入館できます。
↑この階が3階のため、入ると正面に図書館への入り口があります。
かつてはLaw Schoolの校舎として使用されていたKent Hall。Law Schoolの移転に伴い、1962年にEast Asian Libraryも含む、East Asian Studies関係の学部などが場所を譲り受けました。
閲覧室奥に輝く正義の女神のステンドグラスからは、Law Schoolであった名残がみられます。
館内は3階にReading Roomとレファレンス資料や新聞・雑誌、1~2階のStacksに一般図書が配架されています。
木柱や木の書棚に囲まれた落ち着いた雰囲気で、中2階に設けられた閲覧席では勉強もよく捗りそうです。
壁にはコロンビア大学の日本文学・文化研究者といえばこの方、ドナルド・キーン名誉教授のプレートも。キーン名誉教授は現在でも図書館の強力なサポーターだそうです。
同フロアには情報検索のためのPublic Work Station (PC)エリアもあります。
通常のPCの他、日中韓の言語ごとにわかれたCD/DVD専用のスタンドアローン端末が設置されています。
利用者スペースと事務スペースの境には、1893年シカゴで開催された世界万博日本館に展示されていたという木製キャビネットが聳えています。
1~2階のStacksは、建物の天井が高いため1階分を更に半分に区切りM階としており、4層の書庫フロアとなっています。M階部分の床はかつてガラスのままだったそうなのですが、コロンビア大学の共学化に伴いすべて塗装し直したという名残も残っていました。
日本語コレクションとしては人文科学と社会科学分野を中心に蔵書構築しており、特に文学、歴史、宗教、美術の分野が強みとなっています。近年は学際的な研究も盛んなため、自然科学系の資料も収集の機会が増しているそうです。
書庫を回ってみて、館内にある資料だけでも十分な点数だと感じましたが、全体(約100万冊!)の半分以上がプリンストン大学との共同外部書庫に送られているそうです。日本語コレクションは、内約30万冊強。書架の狭隘化もあり、過去10年で貸出がない資料は、機械的に外部書庫行としているとのことです。
日本語以外のコレクションでは、チベット言語の資料が所蔵されているのが特徴的でした。写真には収め損ねたのですが、細長い経典が1本1本収められるよう専門のキャビネットが設けられていました。Tibetan Studiesのライブラリアンはカナダのトロント大学と兼務しており、両大学共同での蔵書構築と研究支援が進められています。
図書館以外では、キャンパス内も少しご案内いただきました。
コロンビア大学は1754年にキングスカレッジの一つとして誕生し、1897年に現在の地、Morning Heightに移転しました。移転してからも120年という歴史があるキャンパスには、歴史的な建造物、趣ある様々な様式の建造物が数あります。大学のロゴは王冠。
Kent Hallをでると目にとまる(隣のPhilosophy Hall正面にある)ロダンの「考える人」。
中は撮影禁止のSt. Paul's Chapel。美しく荘厳な雰囲気に神聖な気持ちになります。
挙式もできるようで、ワシントン大学での同僚がかつてこちらで結婚式を挙げたとのこと。
コロンビア大学訪問は2日にわたり行い、1日は野口様に面会、もう1日はJapanese Catalogerの森本英之様にお会いし、アメリカにおける日本語資料の目録作成に関連するお話を伺いました。こちらに来てから忘れそうになりますが、一応目録担当なので…!
野口様との面会では、Japanese Studiesの学生の中でも、日本語があまり得意でない学生に対する支援の難しさや、英語で書かれた日本研究資料を探すことの難しさを伺いました。日本語ではよく扱われそうなテーマであっても英語では扱いがなく、特に人文系領域の英語文献の少なさと、(日本語が十分に読めない学生は、場合により)それにより研究テーマを変更せざるを得ない状況があるというエピソードが印象的でした。
森本様には、私個人からの質問だけでなく本学の目録担当からの質問も併せて、目録に関する多岐にわたる内容にお答えいただきました。ワシントン大学でのカタログ作業では、「日本語のカタログはコロンビア(森本さん)のレコードを参考にする」と日々聞いていたので、直接質問のできる貴重な機会を得られて感激です。
お二人ともお忙しい中、インタビューに長くお時間を取っていただいた上に資料をくださったり3人でお昼をご一緒したりと、お二人のおかげでニューヨーク滞在の2日間、充実した訪問を行うことができました。
最後にもう一つコロンビア大学関係のエピソードを…
ワシントンD.C.からNYへの移動時に乗るはずの高速バスが全然来ず、D.C.の駅でだいぶ苦労したのですが、その時に助けてくれたトラベラーがコロンビア大の院生でした。その時はそうとは知らずにD.C.で別れたのですが、翌朝ばったりキャンパスの中で会って本当に驚きました。
大都会で人の縁とあたたかさを感じることのできたコロンビア大学訪問でした。
~おまけ~
コロンビア大学のBook Storeにて。
ライオンがマスコットキャラクター!かっこいい!
図書館紹介~メリーランド大学編~
東海岸図書館巡りはワシントンD.C.郊外に位置する、メリーランド大学から始まりました。
なお今回の図書館巡りは、東海岸地域の東アジアコレクションの見学及びそこに勤務するJapanese Studies Librarianの方々に面会し、アメリカで日本研究を行う研究者への支援内容や、Subject Librarianとしての仕事の様子をお伺いすることを目的としました。
メリーランド大学では、プランゲ文庫室長兼East Asian Studies Librarianの巽由佳子様に、プランゲ文庫及び東アジアコレクションを所蔵するMcKeldin Libraryをご案内いただきました。
ゴードン W. プランゲ文庫はHornbake Library4階に位置しています。
コレクションは終戦後の1945~1949年に、GHQ配下機関である民間検閲局(Civil Censorship Detachment)によって収集された日本で出版された印刷物。メリーランド大学の教授であり、当時GHQで歴史室長を務めていたプランゲ博士の手によって、検閲制度が終了した後木箱に詰められ海を渡り、メリーランド大学へと運ばれました。日本国内では所蔵のない資料を多く有しており、利用者はアメリカ国内のみならず、日本からの研究者も多く訪れます。
コレクションは保存のためマイクロ化、デジタル化が進められており、現在図書については児童書や教科書関係資料がアーカイブ化は完了、現在は社会科学系分野のデジタル化が進められています。
コレクション内の図書は、児童書と教科書コレクションの他、文学、経済、政治など分野ごとに分類整理がされ、配架されています。検閲にあたり、出版社はCCDに2部資料を提出することを義務付けられていましが、検閲後は1部が出版社へ返却され、残る1部をCCDが保管していました。CCD保管用だった分がこのプランゲ文庫にあるのですが、中には同タイトルの資料が複数冊ある場合もあり、今となっては返却しなかったのか、もともと2冊以上提出されていたのかわからないものの、重複する本もすべて含め、1冊1冊をコレクションとして保存しています。
中には分類自体が終わっていない資料(和装本など)もありました。
また、デジタル化したくとも物理的に難しい資料の一例をご紹介いただきました。
点字の出版物です!
私の性能の悪いカメラでは点字を全く映せていませんが…このように直接現物に触れてこそ意味がある資料は、保存のためにはデジタル化が必要であるものの、利用のためにはそれだけでは十分でない資料があることを教えていただきました。
また、検閲の対象にこのような資料も含まれていたのというのも興味深いです。実際には検閲できる人物がおらず、収集されただけに留まったものもあるようです。
こちらは壁新聞。学校の壁などに貼られていたとか。
同様のテーマで地域ごとに発行されていたため、地域の特色が見られる新聞です。
壁新聞のコレクションは、2018年に完全オープンアクセスで公開予定となっています。
資料としては保存のためにデジタル化しても、著作権等の関係で完全にオープンにはできず、結局はキャンパスまで足を運んでもらいデジタル化された資料を閲覧してもらうという現状もあるため、今回オープンアクセスとなることはプランゲ文庫コレクションとしては画期的な取り組みになるそうです。公開をお楽しみに!
既にマイクロ化が終了している新聞&雑誌の箱々。写真だとこの箱数の多さに圧倒されることを伝えきれないのが残念なのですが、雑誌は約13,800タイトル、新聞は約18,000タイトルという点数が保管されています。
プランゲ文庫を見学した後は、メリーランド大学のメインライブラリーMcKeldin Libraryに所蔵されるEast Asia collection見学へ。
1階にあるPeriodicalと、4階にある以下の集密書架に配架される資料が中国・韓国・日本語のコレクションとなります。
メリーランド大学での日本語資料のコレクションポリシーとしては、Japanese Studiesで必要となる分野の他、特にプランゲ文庫でも扱っている占領期についての資料は積極的に収集するようにしているそうです。館内は資料再配置の真っ最中で、東アジアコレクションもまた違う書棚へ移動されるそうです。
McKeldin Libraryでは東アジアコレクション以外にも館内全体を一通り回ってみました。
メインライブラリーということもあり規模も大きく、2階には近々完成予定だというResearch Commonsがあります。この階は書架なしです。
夏休み中ということで人はまばらでしたが、学期期間中は人が多いそうです。どこのコモンズスペースも、学生には人気なんですね。
色々な形の机やいすが好きなように動かせるように配置されています。
↑組み合わせの難易度が高そう。
1階にはカフェが。図書館入り口の手前側にあります。
今は人を配置しなくなったという受付の名残も。
そしてこちらが外観です。
メリーランド大学はD.C.中心部から電車で30分、駅からも15分ほど歩いた閑静な場所に位置しています。
赤レンガの建築と白く舗装された歩道で統一されたキャンパスは、散策しても良し、ベンチに腰掛け時を過ごすだけでも心穏やかな気持ちになれる雰囲気の場所でした。
今回面会した巽さんには、旅の初日で緊張も大きかったのですが、気さくなお人柄に旅の疲れも吹き飛び、楽しく見学とお話を伺わせていただくことができました。誠にありがとうございました!
~おまけ~
メリーランド大学の顔でもあるブロンズ像のTestudoとマスコットキャラクターの亀。
アメリカに来てから色々な大学を訪問しましたが、今のところメリーランド大学が一番マスコット(亀)をいたるところで目にした気がします。
アメリカ東海岸滞在記③~ボストン編~
東海岸の旅も終わり、無事にシアトルに帰ってきました!
ニューヨークを発った後はNew Havenに立ち寄りイェール大学を訪問、その日のうちにボストンまで移動し、2泊しました。
ボストンでは主にハーバード大学の図書館を回り、駆け足でマサチューセッツ工科大学のキャンパスを散策したりしました。
時間の関係で特に観光らしいことはできませんでしたが、宿泊したホテル(Chinatown近辺)の近くにあったBoston Commonを散歩してみたり。
一見長閑な雰囲気の公園ですが、その歴史は1634年創立、アメリカ最古の公園と長く、遡ると凄惨な歴史も含みます。
訪れた際はそんなことも知らず暢気に歩いてましたが…。
滞在最終日は朝からボストンコモンを抜け隣接するパブリックガーデンも散策してみました。
こちらには、日本でも『かもさんおとおり』の名で有名なJohn Robert McCloskeyの絵本に登場する鴨の親子像があります。
実際、パブリックガーデンには鴨がたくさん。
パブリックガーデン散策後は思いのほか足が進み、その勢いでロングフェロー橋を渡り…
ホテルを出てから1時間15分ほどで、MITのキャンパス端までたどり着きました!
予定ではホテルを出たらハーバード大学を訪問、その後空港に直行するつもりで道中スーツケースを片手にしていたので、こんなに歩くなら荷物はホテルに置いて来ればよかったと思いました。
MITは時間の関係で本当にわずかしか滞在できず、図書館はHayden LibraryとRotch libraryをちらりと覗くにとどまりました。本当は工学系図書館のBarker Libraryも観たかったのですが、通り過ぎたのに気づかず…
Hayden LibraryはHumanitiesとScienceのLibraryが一緒になっており、更に1階には24時間オープンのエリアがあります。
1階にはInformation DeskとScience Libraryの新着図書エリアがあり、Information Desk脇の階段からはHumanities Libraryへ行けるようになっています。
Science Library側の1階&中2階エリアは、2017年に改装したばかりのようで、新しい空間に対し利用者からの声を求める掲示が貼られていました。
こちらはArchitecture & Planningを専門とするRotch Libraryが入っているRogers Building。
このドーム?の下にVisitor Info Centerもあります。
Rotch Libraryは2階に位置するのですが、1階側からは案内板等は(すぐには)見つけられず、意外と入り口がわかりにくかったです。(案内があると私みたいな観光客が押し掛けるからですかね…)
ドーム脇のエレベーターで上がると表示があり、すぐに入館できます。
この1週間の東海岸の旅では、色々な方のご協力やご厚意に助けられ、無事に予定通りの訪問を終えシアトルへと戻ることができました。特に今回訪問を受け入れてくださった各図書館の方々は、本当にお忙しいところ快く迎えていただき、刺激も多く受けることのできた日々でした。
肝心の図書館紹介はまだまだまとめられていませんが、早くお送りできるよう書き進めます…!
~おまけ~
ボストンではご縁があり、クラリネット奏者リチャード・シュトルツマン氏とマリンバ奏者ミカ・シュトルツマン氏ご夫妻の生演奏を聴かせていただきました!
すっかり音色に惚れてしまいCDを購入するという…特にマリンバの優しい音色とMikaさんの情熱的な演奏とのギャップがたまりません。
アメリカ東海岸滞在記②~ニューヨーク編~
ニューヨークには13日夜~16日の早朝まで滞在していました。
シアトルの長閑さが恋しくなる久々の大都会。
こちらではコロンビア大学に訪問し東アジア図書館見学&インタビューさせていただいたほか、New York Public LibraryとNew York University Elmer Holmes Bobst Libraryをふらりと見学に行ってみました。
New York Public Library(Stephen A. Schwarzman Building)は1911年に一般公開されて後、今では世界中から年間100万人にのぼる訪問者を迎え入れています。
↑左右手前側に有名なライオン(Patience and Fortitude)がいますが、うまく撮影できず…残念。
ボザール様式の建築ということで、内装も建築様式も見るべきものが多々あります。こちらもLC同様Building Tourが無料で行われています。
図書館としてもちろん利用が可能ですし、歴史ある建築物は一つの観光スポットにもなっているため、今回見学に訪れた日もとにかく人の多さに圧倒されました。
閉館ぎりぎりに退館したのですが、この写真に写る入り口前の階段には人だかりが。
単なる見学者も多い中、閲覧席で読書をしたりPCで作業をしている利用者の姿もよくみられました。
こちらはNew York University のメインライブラリーとなるBobst Library。
東アジアコレクションを所有しているため訪問してみることとしましたが、アポはとらずに自主見学です。訪問者は入館ゲート手前の窓口で、ID(パスポート)を提示すると1日入館券をもらえます。
写真は外装&エントランスホールのみご紹介。
こちらの図書館はとにかくモダンさに圧倒されました。
今までアメリカで見てきた図書館は、比較的歴史ある建築物であるところも多く、ある意味新鮮な気持ちで館内を散策できました。
フィリップ・ジョンソンとリチャード・フォスター二人によってデザインされた建物は、金の装飾のきらびやかさがありつつも黒を基調とした重厚な雰囲気があり、館内の静寂さを保つ空間づくりがなされているように感じます。
現にCommonsスペースもあるのですが、一部改装中だったり学生が少ない時期なのもあるためか、利用者が使用できるLL2~10階どのフロアも本当に静かです。
東アジアコレクションは10階北側にあり、閲覧室はガラス張りのため、NYの街並みを一望できます。
部屋には中国語・韓国語・日本語の一般書及び参考図書が配架されており、西洋言語の東アジア関連資料は他の一般資料と同様に各フロアに、雑誌は雑誌でやはり西洋言語のものと同じ雑誌書架に配架されているようです。
さてさてニューヨークを離れたのちはYale大学を訪問すべくNew Havenへ移動し、その日のうちにBostonまでやってきました。
Bostonが東海岸への旅最後の地になるので、一先ず移動は無事に終わりほっとしています!
~おまけ~
NYでの図書館訪問前に、24時間運航のStaten Island行き無料フェリーで遠目に自由の女神を眺めてきました。
この後天気が崩れるという予報だったので生憎の空模様でしたが、ちょっとした気分転換にもなり気持ちよかったです。
夕焼けの自由の女神像がきれい、という話をききますが、朝方コーヒーを片手に眺めるNYの風景も、眠気覚ましによい気がします。
アメリカ東海岸滞在記①~ワシントンD.C.編~
突然ですが、11日から一週間の予定で、東海岸の大学図書館を巡る旅をしています。
Washington D.C.から始まり、New York、New Haven、最後にBostonに寄り18日にシアトルに帰る予定です。
初日はメリーランド大学プランゲ文庫に訪問させていただいたので、別の記事にてご紹介できればと思います。
ワシントン滞在中は自分でも驚くことに気づいたら2日連続で寝落ちしていて全然ブログをあげる余裕もなく…とりあえず図書館見学以外の記事として、Library of Congress+αを回ってみたので簡単にご紹介です~
図らずも観光シーズン真っ只中のD.C.は人がたくさんで蒸し暑く、シアトルでは耳にしなかった蝉の声をきき、東京を思い出しました…。
Library of Congressは今回の図書館巡りの候補にもちろん入っていたのですが、日程的にどうしても土曜日になってしまい、アポは取らずに通常見学で入館しました。書架は一般開放されていないので、単なる建物見学にはなりますが、ここが世界最大規模の図書館かと思うと感慨深いです。
10時過ぎに行ったのですが、既に入館に長蛇の列。セキュリティチェックがあるとどうしても並びます…
この日は無料で行われるBuilding Tourに参加しました。45分ほどで館内建築の見どころを解説してくれます。一部、このツアーでしか入れないエリア(主閲覧室、天井ドームと閲覧席を眺望可)もあります。
知を司るミネルヴァのモザイク画は主閲覧室を守護するように配置されています。その後ろに…
ちらっと覗ける閲覧室。利用登録すれば使用も可能です。
これまでLCのWebサイトを使用しても、掲載されている画に特に注意を払ったことはありませんでしたが、見覚えのある彫刻や画に多く出会い、これのことだったのかと驚きの連続です。
個人的にはLC Authoritesをよく使用するので、2階の各回廊に立つ天使たちに出会えてちょっと感動しました。
ワシントンD.C.には土日で滞在できたので、他にも定番の美術館・博物館系を訪問したり、DC Go Card(Explore Pass)を利用した観光を行ってみました。
どこもかしこも初めてなので、行く先々で立ち止まり写真を撮影したりしたのですが、この3日間で一番思い出に残りそうなのはNight Tourでしょうか。
Explore Passで選べるアトラクションの一つにBig Busが企画するPanoramic Night Tourが含まれていたので参加したのですが、出発直後に雷雨に見舞われ、バスデッキではなく車内でガイドを聞くも、気温も急激に下がったため窓ガラスが曇り何も見えないという状況に。
Union Station出発時は青空も見えましたが、
ワシントンモニュメント横を通り過ぎる際には雷鳴とともにこんな雲行きになり…
遂に数メートル先も見えないほどのスコールに。
本来はホワイトハウスが綺麗に見えるはずの場所。
2時間のツアーのうち、30分はバスを降りてリンカーンメモリアルなどを散策する予定が含まれていたのですが、はじめに近くを通過した際はとても降りられる状況ではなく、散策は見送ることに。
このまま下車せずに駅に戻るかも、ということだったのですが、奇跡的に再びリンカーンメモリアル近くを過ぎた際は雨も小降りになり、最終的には傘もいらなくなりました!
ということで不運に見舞われながらも無事に目にすることができた、夜のリンカーンメモリアルとリフレクティング・プールはこちら。
雨上がりの澄んだ空気の中水面に移るモニュメントはいつまでも見ていられそうで、Tourでなく普通に夜に来てもよかったかなと思ったりしました。
そしてその結果次の日も同じところに来てみたりしました。
昼も夜もどちらも心が凪ぐ景色です。
ちなみにPassはアプリをパスポート代わりに利用できるのですが、Big Busの乗車に使用する際はUnion SationのBus Kioskで手続きが必要になります。
KioskはCapitalに面した側のStreet Level駅構内壁際、Big Busが停車している道路側から駅に入ってすぐの所にあり、ここでPassのQRコードを見せると当日付のレシートを発行してくれます。
ナイトツアーも日中のHip Hop Busもこれが乗車券代わりになりますので、一日が終わるまでは捨てずに携帯しておきましょう。
さて、ワシントンDCのことはこれくらいにして、明日からはNew Yorkの図書館巡りに行ってきます。
ところでこの記事はワシントンDCからNew Yorkに移動する電車内で書きはじめたのですが、危うくワシントンDCでもう一泊する羽目になりそうでした…待てど暮らせど乗る予定の高速バスは来ず、結局電車に乗って移動したのでした。日付をまたぐ前にNYに辿り着けて良かったです!
明日からは大都会の図書館訪問、楽しみです~!
~おまけ~
ワシントンD.C.のビール。
Atlas Brew WorksのDistrict Common (Califolnia Common) とPONZI(IPA)。
図書館紹介~ワシントン大学Music Library編~
今月はワシントン大学の芸術系図書館を巡ってみることにしました。
まずはMusic Libraryをご紹介です。
School of MusicのあるMusic Buildingは、向かいに建つArt Buildingと対になる構造で、同じ年に建築された校舎です。
図書館はMusic Buildingを入ってすぐ右手にあります。1階の入り口はこちら。
地下にも資料がありますが、図書館内では繋がっておらず、利用したい場合は一度館外へ出て下のフロアに行きます。資料はスムーズに移動ができるように、Book Liftが設置されていました。
2フロアで約7万点の本と楽譜、4万6千点の音声資料を所蔵しています。
コレクションとしてはヨーロッパのオペラ関係資料及びAmerican Music Scoreを強みとしています。
1階には入館すると左手にサーキュレーションデスクと書架、正面にGroup Study Area, 右手にReference及び出納式書架が並びます。
ちなみにこちらの校舎は古いこともあり、図書室は残念ながら冷房がありません。訪問時は館内すべての窓を開けて対応していました。更に暑い場合は扇風機も稼働。
スザロにも音楽関係資料は所蔵されており、音源も聞けるMedia Centerがあるため、そちらも学生はよく利用するようです。
あまりにも自然に置いてあるので見落としそうになりますが、1950年代に製造されたというオルガンも入り口にあります。もちろん触われて音もでます!
資料で目につくのはやはりMusic Libraryならではの多種多様な楽譜。大きさがまちまちのため、通常の書架とは別に、ポケットサイズ用と大型用の楽譜書架があります。
↓わかりにくいですが携帯用の大きさの楽譜。小さいと文庫サイズほどのものから並んでいます。
こちらは大型の楽譜。地下に別置されています。
地下には図書と音源資料が配架されています。閲覧席はQuiet Study Areaになっています。
CDやDVDはもちろん、LPレコードもたくさん!
開架式で直接パッケージを見られるのも嬉しいですね。
CDのみが収容されている棚。写真には映っていませんが、右手にも同じように並んでいます。
DVDコレクション。
ワシントン大学Scool of Musicのオケの演奏は、DVDで記録されたものを図書館で保管しています。
カセットテープも所蔵していますが、徐々にデジタル化する作業をすすめているそうです。ちょうど訪問した際に、アルバイトの学生さんが変換作業をしていました。
ちなみにMusic Libraryで働く学生アルバイトは、もちろんMusic Schoolの学生なのですが、オケに入っていない(←重要)学部生がほとんどだそう。一部院生もいますが、作業としては閲覧カウンター業務補助と書架整理がメインのため、時間の取れる学部生が応募してくることが多いようです。
Libraryに併設されるListening Center。
音源資料は身分や資料によって館外には持ち出せないものもあるため、ここで使用できるようになっています。この部屋に関してはPCが設置されており室温が上昇しやすいため、冷房が設置されています。暑い日はここに自分のPCをもって避難してくる学生もいるそう。
PCのほかにも、各種音源再生機と可動式モニターがあります。
上記の写真のように部屋には大きな鏡が張られているのですが、これは指揮科の学生が式の練習ができるよう設置されています。モニターや再生機で音源を流しつつ自分の姿を確認するそう。
また、部屋の中央は椅子が並べられるようになっており、複数人でモニターに映された演奏映像などを鑑賞できるようにもなっています。
見学の他にも、Music Libraryで保管する貴重資料(イタリア人作曲家プッチーニやロッシーニ直筆の書簡)を見せていただいたり、昨年作成されたばかりのCrawford Collection Catalog(UWで所蔵する、William Crawford IIIが収集した初版音楽資料及び同氏アーカイブ資料のカタログ)をいただいたりと、充実した見学をさせていただきました。UW内の他の図書館と比べると決して規模は大きくありませんが、歴史のある建物にLibrarianと学生アルバイトとの距離も近く、大学というより学校図書室を彷彿とさせるような、懐かしさを感じる落ち着いた雰囲気の図書館(図書室)でした。
~おまけ~
週末にChihuly Garden and Glassに行ってきました。
今までシアトルで訪れた場所の中で一番気に入りました…!ガラス彫刻家Dale Chihuly氏はワシントン州タコマ出身、ワシントン大学でも学んだ経歴のある作家です。
2枚目の作品はシアトルの西側に位置するピュージェット湾(Puget Sound)をイメージした作品。よく見ると海の生物も散りばめられています。
日本では富山市ガラス美術館に常設の作品があるということで、帰国したら是非観に行きたいと思うほど美しい作品の数々です。その前に、UWのタコマキャンパスの図書館にも作品が飾られているらしいので、そちらに行ってこようと思います!