図書館紹介~イェール大学編~
東海岸図書館巡り第3弾はNew Havenにあるイェール大学。
アメリカ最古の計画都市のひとつである街とそして伝統ある大学。New Haven訪問日は天気にも恵まれ、図書館だけでなくキャンパス内もたくさん写真を撮って歩いてしまいました…。
イェール大学で面会したのはLibrarian for Japanese Studiesの中村治子様。大学のメインライブラリーであるSterling Memorial Library (スターリング記念図書館)内にあるEast Asian Reading Room及び日本語コレクションの一部をご案内いただきました。
こちらがSterling Memorial Library。
1階は誰でも入れますが、書庫のあるフロアはセキュリティがあり、学内者のみが利用可です。
エントランスホールは観光スポットの一つにもなっており、崇高な雰囲気に圧倒されます。首が痛くなるのにも気づかず天井を見上げ続けてしまうという…。
見た目も中身も年月を感じさせるゴシック様式の建造物ですが、実は1927年着工、1930年竣工と意外と新しく、あえて古く見せる建築方法をとっているそうです。
設計者は建築家James Gamble Rogers、イェール大学の他の校舎の建築も同時期に多く手掛けています。石造の彫刻家はRene P. Chambellanで、館内をよくよくみてみると、遊び心(と言っていいかわかりませんが)がたくさん!探すのが楽しいです。
1階にあるStarr Main Reference Room。アメリカに来てワシントン大学スザロ図書館に続いてこんな素敵なレファレンスルームを見れるとは…!
その横にはもともと清掃用具を収納していたと思われる保管庫が。
展示ケースの並ぶ廊下の柱には個性豊かな石造の数々。
こちらは館内にあるMusic Library。建築当時は中庭だったの場所を、屋根を設けて館内仕様としたそうです。つまり窓のある壁部分は外壁にあたる部分だったんですね。
さてここからが本題ですが…
East Asian Reading RoomはSterling Memorial Libraryの2階に位置します。
こちらには雑誌とレファレンスブックが配架され、更に閲覧席が設けられています。今は工事中のため窓がおおわれていますが、(他の図書館内も含め)ステンドグラスがはめ込まれています。
以前はこの部屋にレファレンスデスクも設けていたそうなのですが、今は人が常駐することはないそうです。
レファレンスブックのある書架では、East Asian Studies所属の利用者が、借りた本をまとめて置いておくことができるReserved Shelvesがあり、実際に何冊もの本が借りている利用者の名前ごとに管理されていました。
閲覧席には障子を利用したパーテーション。
他には展示ケースもあり、イェール大学卒業生である朝河貫一の著作などが展示されていました。
2階にはReading Roomの他、East Asian Studiesが優先して使用できるクラスルームとセミナールームもあり、授業で使用されています。
さて2階のReading Roomから離れて一般書架へ。
Sterling Memorial Libraryは見た目からはわかりませんが、7階建て16層で約400万冊が収蔵されています。写真にはありませんが、館内エレベーターはボタンがかつて見たことのない仕様(M階ボタンが多い!)でちょっと不思議な気分です。
(ほかの東アジア言語もそうですが)日本語の一般図書は、他の西洋言語の資料と同様LC分類に基づき、一般書架に組み込まれる形で配架されています。
今回見せていただいた書架はLC分類で東アジア、アフリカ、オセアニアの言語・文学に当たるPLの書架。2M階に日本語部分にあたるPL501-889がまとまって配架されています。
日本語コレクションとしては、文学(特に江戸期)、歴史、映画(チラシ、パンフレット、カタログなど)、そしてLGBTQ(同性愛)関係などを強みとしています。イェール大学ではかねてよりLGBT 研究が盛んで、日本語コレクションとしては、2006年より、日本のLGBTQコミュニティ資料の収集などを行っています。
また貴重書のコレクションでは、前近代日本の資料としては日本国外でも大きな規模を所有する大学の一つでもあり、目を見張るものが多々あります。例えば時は幕末、ペリー来航時に主席通訳として同行していたイェール大学教授サミュエル・ウェルス・ウィリアムズ教授がアメリカへ持ち帰った資料の一つに、吉田松陰が「世界見物」を嘆願する書状が含まれていたりします。
図書館見学後は、大学のキャンパスツアーにも参加してみました。このツアーでしか入れない場所や、Beinecke Rare Book & Manuscript Libraryにも訪問できます。
個人的にツアー前の待合室で流れる”That's Why I Chose Yale”が面白くて、高校生だったらきっと入学したいと思う大学だな、と感じました。見るだけで楽しい気分になれるのでよければどうぞ!
www.youtube.com 実際の生徒と教職員が参加し作成されていて、撮影場所の一つに図書館が使用されていたのも(そしてその使われ方も)面白かったです。この映像を見終わった後、ツアーガイドの学生たちが「なぜ自分がイェール大学を選んだか」という理由と共に自己紹介をして、キャンパスツアーが始まります。
見どころポイントの一つはイェール大学、そしてNew HavenのランドマークでもあるHarkness Tower(鐘楼)。約66メートルと、他に高い建物を目にしないこの近辺では遠目でも存在がわかります。ツアーでは一般では入れない施錠されている中庭に入り、鐘楼や校舎の説明を聞くことができます。
青い空に聳える塔。
キャンパスのどこにいてもそうですが、特にツアーで訪れたゴシック建築に囲まれた静かな中庭でこの塔を見上げると、古の都にタイムスリップしたような錯覚に陥ります。
もう一つの見どころはスペシャルコレクションが収集されているBeinecke Rare Book & Manuscript Library。世界の美しい図書館としてもよく紹介されている特徴的な図書館。
外壁は大理石をはめ込んであり、光が当たると綺麗なそうな。収集されている資料はガラス壁で覆われた建物の中心部に柱のように配架されています。
入り口からぐるりと、この周りを囲むように展示ケースやソファーが配置されています。
ちなみに展示ケースにはグーテンベルグ聖書が展示されています。Library of Congressにあったグーテンベルグ聖書には、(ツアーで説明してくれるのもあって)人だかりもできていましたが、こちらではみな目もくれず、書架と壁ばかりに注目しているという…。
ツアー以外はSterling Memorial Libraryと地下で繋がっているAnne T. and Robert M. Bass Library(学部生用図書館)に行ったり、Book Storeに寄ったりしていたら1日があっという間でした。時間がもっとあれば大学の美術館にも行ってみたかったのですが、New Havenでは宿泊しない予定だったので泣く泣くその日の夕方にBostonまで移動しました。
今回面会した中村様には、滞在スケジュールが短く、また中村様ご自身もご多忙の中、館内の案内だけでなく移動中や昼食中でも終始こちらの質問に回答いただいたり、また大学内の見どころなどもご紹介いただきました。
最近の図書館トピックでは、スターリング記念図書館の中央に位置していたテクニカル部門が、2016年1月(←最近でもないですかね…)に図書館から15分ほど離れた場所へ移動し、その跡地にはCenter for Teaching and Learningが入った、という話を聞きました。また、9月にオスロで開催されるEARJS(日本資料専門家欧州協会)年次大会でご発表されるということで、そのことについても少しお話を伺ったりしました。とにかくここには挙げきれないくらい、短い時間で図書館のこと、大学のこと、New Havenのことと多岐にわたるお話に、またゆっくりと訪れる機会を持ちたいなと思う滞在となりました。ありがとうございました。
~おまけ~
イェール大学のマスコット犬、Handsome Danくん。バスにも乗ってます。