図書館員@UW研修者のブログ

2017年5月~11月にワシントン大学東アジア図書館で研修していた大学図書館員の期間限定更新ブログ。大学図書館での仕事やシアトルの生活をゆるゆるお送りします。

図書館紹介~ハーバード大学Law School Library編~

今度こそ東海岸図書館紹介は最後、ハーバード大学Law School Libraryをご紹介します。ハーバード大学ではもう一か所、Fine Arts Libraryも回ったのですが、写真は撮らなかったため簡単な紹介に留めたいと思います。

この2箇所は当初訪問の予定はなかったのですが、Harvard Yenching LibraryのSharonさんに両図書館の方々をご紹介いただき、急遽ご案内いただけることとなりました。

Law School LibraryではLibrarian for Japanese Lawの本宿マリ子様、Fine Arts LibraryではAsian Art BibliographerのNanni Deng様にご案内いただきました。

 

図書館があるLaw Schoolの校舎はこちら、Langdell Hall。他にもいくつか校舎はあるようです。

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今年はなんとLaw School200周年の年!歴史がとんでもなく長いですね。

 

Law Shool Libraryは、蔵書数はワイドナー図書館に次ぎハーバード大学内で2番目の多さを誇る図書館です。建物の中央から入ると法律家でありハーバード大学教授でもあったJoseph Storyが迎えてくれます。像の制作者は息子であるWilliam Wetmore Story。

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 入館した正面にはCirculation Deskがあり、左手にはちょっとした新聞や雑誌も置いてあるラウンジがあります。ここまでは誰でも利用可能です。f:id:seattle2017:20170830022720j:plain

入館して右手のセキュリティゲートを抜けると、書架のあるエリアに入れます。

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このフロアは2階にあたるのですが、雑誌、レビュー誌が並ぶ書架を抜けると、PCが設置された教室とマイクロ室があります。

マイクロ室は最近改装したそうで、小休憩できる家具が設置されていました。ついついくつろぎたくなるソファー。

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一つ上のフロアへ上がって3階へ。

館内を回っていると、ちょうどユニークなものを設置している場面に遭遇。

Private Talking Spacesです。

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電話ボックスのようなこちらの小部屋は、人二人が隣り合わせで座れるようになっており、その名の通り、館内でプライバシーを配慮した上で会話や電話ができるよう考案されたものです。これはハーバード大学Library Innovation Labという部門が考案したもので、他にも様々なスケッチ(と呼ばれるプロジェクト)を通じ、図書館での新たな試みを行っています。↓参考にしたい取り組みもたくさんあります。

lil.law.harvard.edu

こちらの書棚にあるのも、Library Innovation Labのプロジェクトの元、取り組まれていることに関連する資料。プロジェクト名はCaselaw Access Projectです。

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州の裁判所による判決は本来パブリックに公開されており、誰もが見る権利を有していますが、裁判所が公式に発行する判例集自体は、オンラインでのアクセスが行えるようにはなっていません。この判例集をデジタル化し、オープンアクセスを可能にしよう、という取り組みがこのプロジェクトで、上の写真はデジタル化が終了して外部書庫に送られるのを待っている判例集たちです。本は背を切られ、ページが1枚づつスキャンされます。それが終了すると、一冊一冊が専用の機械で保存のためパッケージに入れられ、上記のよう積まれています。

デジタル化を担当している方に少しお話を伺えたのですが、とにかく量が膨大で、デジタル化するスピードも早い!ということがよくわかりました。スキャンしたページ数は2016年だけでも25,000,000ページ以上。これは一週間辺りにすると45,000~50,000ページ、働いているスタッフ数を鑑みると一人1日9,000ページ、1時間で80ページ以上を処理している計算だそう。(←ちょっと聞き取りに自信がないので違っていたらすみません…)もうすぐウェブで公開されます!

 

 4階にはアメリカ各法を扱う書架が並ぶReading Roomがあります。

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館内は15年ほど前に改装されたそうなのですが、それまでこのフロアの書架は窓際に設置されており、日光を遮り少し暗い雰囲気だったそうです。今は明るく開放的な雰囲気です。

 

こちらも4階にあるCasperson Room。法学図書館としてもそうですが、法学に関するものとしては世界最大級というアートコレクションの一部を見ることができます。展示や講演などにも使用されており、展示前にはこちらでレセプションを行ったりもするそうです。

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4階から隣の建物へ向かう渡り廊下には、巨大クッションの数々。かなり使い込まれているようで結構へこんでるのも多いです。Law Schoolの学生も(むしろだからこそ?)癒しと休息を必要としてるんですね…。

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廊下を抜けるとInternational Legal Studies(ILS)の資料が並ぶ建物へ。日本法も含め、外国法もまとめてこちらに配架されています。

ILSではLC分類の他、今でも一部独自の分類であるMoody classification systemが使用されており、過去分に関しても、その分類に基づき請求記号が付与された本が並ぶ棚もあります。

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最後に、Fine Arts Libraryのことも少しだけ。

特に東アジアの美術関連資料を収集している図書館としては、北アメリカ最大級というこちらの図書館。(建物に入って右手に入館ゲートがあります。)

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そもそも東アジア関連資料を美術専門図書館として収集している大学は、北アメリカだとハーバードとプリンストン大学くらいしかないそうです。多くの場合は、東アジア図書館がコレクションの一部として所有しているそう。

こちらで紹介いただいた中で特徴的だったコレクションが、East Asian Painting Scrolls。300を超える日本と中国の巻物資料です。といってもFine Arts Libraryで保管しているのはすべてレプリカで、Art Schoolの授業で活用できるよう収集され、実際に学生が直接見たり触れたりできるようになっています。ハーバード大学の美術館に本物が所蔵されているものもあります。

 

本宿様とNanni様には、突然にもかかわらず時間を割いてご案内いただき、ボストンでは予定以上の、充実した図書館訪問を行うことができました。ハーバード大学では間もなく新学期を迎えるという時期で、学内にはオリエンテーション中の新入生の姿も目にしました。お忙しかったであろう時期に、本当にありがとうございました。

ボストン行自体は、実は出発直前までなかなか決まらず、旅程としては行き当たりばったり感も若干否めなかったのですが、思い切って訪問を決めてよかったです。唯一の心残りはボストン美術館に行けなかったことなので、また何かの機会に訪れたいものです。

 

これにて東海岸の図書館紹介は終わりとして、また次からはシアトルでの日常生活編をお送りしたいと思います~

 

~おまけ~

ハーバード大学ではハーバードクリムゾン(大学のスポーツチーム)のマスコットキャラクターがジョン・ハーバード(人)だということはわかったのですが、立ち寄ったCOOPやBookStoreではちょっと視界に入るところにはなかったので、代わりにボストンの鴨をお送りします。

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